- スペシャルティコーヒー
コーヒー豆がロースターに届くまで〜スペシャルティコーヒーの品質を左右する、生豆の梱包材の話〜
ゴールデンウィークも終盤に差し掛かりましたね。皆様いかがお過ごしですか?4月は暑かったり寒かったりと不安定な天気でしたが、5月に入り、まだ若干の寒暖差はあるものの、概ね天候には恵まれたスタートになったのではないかと思います。天候の変化は、私たちが生活していく中で日々気になることです。洗濯物が干せるかな、、とか。
実は、コーヒーの生豆も気温や湿度の変化にとっても敏感で、それが品質の劣化にも大きく影響を与えてしまうことをご存知でしょうか?
<というわけで今回は、品質管理に欠かせない「コーヒーの生豆の梱包材」について、ロースターの端山より発信しようと思います!
そもそも生豆とは
まず、「生豆」の読み方ですが、コーヒー業界では「なままめ」と読むのが一般的。英語ではその見た目から、「グリーン」と呼ばれています。日本人でもコーヒー関係の仕事をしている人は「グリーン」と呼ぶことも。(知っているかもしれませんが改めて。)
生豆とは、収穫後のコーヒーの果実を精製 (果肉とパーチメントを除去)したもので、コーヒーノキの種子の部分です。コーヒー豆の精製については、こちらの記事をご覧ください!
コーヒーの生豆は高温下にあると、豆の呼吸が促進され劣化速度が早まってしまいます。そして高湿下であっても、微生物の影響を受けやすくなりカビが発生します。
そのため、コーヒーの生豆には適度な温度・湿度の管理が不可欠です。
コーヒー豆はどこから来るのか
コーヒーは主に、『コーヒーベルト』と呼ばれる生産地で収穫されます。コーヒーベルトとは、赤道を挟んで”北緯25度から南緯25度まで”の範囲に当たり、コーヒー栽培に適した地域のことを指します。そのコーヒーベルトの中で、降水量・日照量・土壌などの必要条件が満たされた、かつ標高の高い地域でコーヒーの木は育ちます。
そのような最適な環境下で育てられたコーヒーチェリーは現地で精製された後、生豆の状態となりアフリカ・中米・南米など世界各地から日本へ届けられています。コーヒーの生豆は、コンテナの中に保管されて船で輸送されることが多く、国によっても異なりますが出港から日本まで、最短でも1ヶ月以上かかってしまうことがほとんどなのです。
そんなコーヒー豆が、どのような状態で運ばれて来るのか、気になりませんか?
コーヒー豆を守る!豆袋の秘密
冒頭でもお話ししましたが、生豆は温度変化に弱くとても繊細。コンテナの中とはいえ、気候の変化がとても激しい海の上を、どのような形や梱包で輸送され、生豆は守られているのでしょうか。
代表的なものをいくつか紹介したいと思います!/p>
①麻袋
「麻袋」はコーヒーの生豆が入っている最も代表的な袋です。コーヒーに携わっている人はもちろん、そうでなくとも、コーヒーショップなどで目にすることもあるのではないでしょうか?この袋があればコーヒーショップかな?という印象もあるかもしれません。
一概に「麻」といっても、その種類は約20種類以上あり、コーヒー豆の梱包に使われる麻袋は主に「ジュート (黄麻)」というもの。「ジュート」は安価で耐久性に優れていることから、穀物などの農産物・ナットやボルトなどの工業資材・郵便物の運搬にも使われているのだとか。そして通気性にも優れている為、コーヒーの生豆の輸送や保管にも多く使われているのです。また、麻は再生可能な天然資源でもあるので、特別な設備がなくとも簡単に使用できることも、多く使われる理由の一つです。
コーヒーの麻袋はそれぞれの国や農園ごとに、大きさ・デザイン・素材に違いがあり、その国や農園の個性や雰囲気が楽しめます。国ごとに輸出規格が異なるため、30kg程度のものから、大きいものでは60kgの豆が詰められています。(これを運ぶのはかなり重労働。)
さらに、麻袋には生産国はもちろん、収穫年度・農園名・品種・等級・精製方法・輸出業者など様々な情報が記載されています。なかにはコーヒーチェリーや動物の絵もあります。
オニバスコーヒーが取り扱っているグアテマラのラボルサ農園の麻袋には”ONIBUS”のロゴが入っています!
私たちは、このグアテマラを”マイクロロット”として毎年買い付けており、生産者との関係性を築き続けています。(このラボルサ農園が詳しく紹介されたこちらの記事もぜひご覧ください。)
ちなみに、ロースター併設の八雲店では使用済みの麻袋を無料でお譲りしています。麻袋は、プランターカバーにしたり、タペストリーにしたり、、ぜひお好きな用途に使用してください!様々な国の柄や違いもあります。気になる方は八雲店まで見に来てくださいね!
②グレインプロ(グレインバック)
グレインプロは、アメリカのグレインプロ社の商品です。厚さ約0.1mmほどのポリエチレン素材の穀物専用ビニール袋。3層構造の中間に薄い空気の層があり、厚手で強度があります。
グレインプロを密閉して使用することにより、生豆の乾燥を防ぎコーヒー豆内の水分を保持しやすくなります。また、外気に触れることがないため紫外線や湿度の影響を受けづらく、酸化防止や、保存中の虫の混入・カビ・その他の微生物の発生防止にもなります。
従来は、麻袋に直接生豆を入れ輸送されていたのですが、先述の通り通気性が良いことがかえって、環境の変化に影響されやすいことや虫食いの被害にあいやすいこと等が問題となっていました。
ですので、近年の高品質のスペシャルティコーヒーは、コーヒーの生豆をグレインプロに入れてから麻袋に入れ、二重包装で輸送されています。
③真空パック(バキュームパック)
真空パック(バキュームパック)は、その名の通り袋内の空気を除去し、内部を真空状態にしたものです。外気との接触を完全にシャットアウトし、より高い水準での品質の保持を目的としています。水分(湿度)・におい・酸素から徹底的に生豆を守るとともに、生豆の呼吸を抑制することで、劣化を劇的に遅らせることができます。空気や光を通さず気密性が高いことからアルミ素材がよく使用され、穴が開くことを防ぐためダンボール箱に入れて輸送されます。
そういった観点から、数年前からCOE(カップ・オブ・エクセレンス)等のコンテスト入賞ロットの多くが、真空パックが使用されています。
近年では真空パックを使用してコーヒー豆を輸出する輸出業者、農園も徐々に増えてきてはいますが、専用の設備が必要であること、梱包コストが大幅に上昇することから、まだまだ多くはありません。
さいごに
いかがでしたでしょうか?生豆の梱包方法にはさまざまな種類があることを少しでも知ってもらえたら嬉しいです!
今回の記事では生豆の梱包材について紹介しましたが、店舗に到着後の生豆の保管方法や焙煎後のコーヒー豆の保存方法も同じくらい大切です。
野菜や果物と同じように、商品の価値を下げないために適切な環境で保存することは、とても重要だと思います。生産者が丁寧に育て、輸送されてきたコーヒー豆を出来る限り品質を保持していくために、工夫し日々管理に取り組んでいます。
焙煎後のコーヒー豆の保存方法など、またいつかご紹介します。気になる方はぜひ、店舗スタッフに聞いてみてくださいね!
text by Eriko Hayama