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沼へようこそ!コーヒーの精製方法の話〜「発酵」の力で変化するコーヒーの味わい〜

沼へようこそ!コーヒーの精製方法の話〜「発酵」の力で変化するコーヒーの味わい〜

前回こちらの記事で生産エリアと焙煎度合いの話をしましたが、今回はその続編として「精製方法」のお話をしようと思います。

「精製方法」が変わるとコーヒーの味わいは大きく変わります。すっきりとした味わい、果実味炸裂の酸味などなど「精製方法」でのみ可能な味の表現があります。

コーヒーにおける沼と言っていいほど知識の枝葉が多く、小難しく感じるかもしれませんが、少し頑張って読んでみて下さいね。

「精製方法」とはなんぞや?と思う方から、「はいはい。今キテますよね。」とうなづいている方まで楽しんでもらえると嬉しいです。読み終わった頃には自分の好みの「精製方法」を探しに行きたくなるはず。キーワードは「発酵」です。楽しんでいってみましょう!

 

そもそも「精製方法」とは?

そもそも「精製方法」とは?

コーヒーは、コーヒーの木に熟した果実から取ることが出来ます。私たちが「コーヒー豆」と呼ぶもの、実はコーヒーの「種子」なんです。その熟した果実から「種子」を取り除くまでの過程のことを「精製方法」と呼びます

今までは外皮と果肉を着けたまま乾燥させたり、外皮と果肉を取り除いて水に漬けたりといくつかの方法で行っていましたが、「発酵」における研究が進み、色々な方法で味わいを変化させることが発見されました。昨今においては環境負荷などにも考慮した「精製方法」も行われています。

コーヒー豆の精製過程によって生み出される「発酵」のチカラで、コーヒーの味わいをコントロールする。これが精製方法の「肝」となります!

今回はオーソドックスな「精製方法」から、現代的な(ちょっとオタッキーな)「精製方法」までご紹介していきます

①ウォッシュトプロセス

ウォッシュトプロセス

水に浮いたものは軽いので取り除く。それによって高い品質のものだけを選ぶ。

スペシャルティコーヒーにおいて最も一般的な精製方法のひとつがこの「ウォッシュトプロセス」です。

パルパーと呼ばれる機械を使い、コーヒーチェリーの表皮と果肉を除去し、種子の周りに付着している※ミューシレージ(粘着質)を残した状態で水に漬けます。水に12-24時間(生産国によっては前後する場合もあります。)漬けると、自然発酵でミューシレージが剥がれ、その後水で洗い流すとフリーウォッシュトと呼ばれる精製方法になります。

 ※ミューシレージとはこの写真にある「Pectin Layer」の部分。種子の周りにあり、ぬめぬめとした粘着質はほんのりと甘みを含みます。

コーヒー豆内部

photo by elevencoffees

上記に対して「メカニカルウォッシュトプロセス」もあります。文字通り機械を使用してミューシレージまで取り除く精製方法です。こちらはウォッシュトのデメリットでもある、水の使用量を大幅に節約できますが、問題として機械のコスト面などもあり、まだ大きく広がってはいません。

ウォッシュトプロセスのコーヒーは多くの過程でかかる時間や人件費と非常に手間がかかりますが、欠点豆、未熟豆、過塾豆を高いレベルで除去することができ、透明感のある綺麗な酸味を伴ったカップクオリティを表現することが出来ます。

きれいで飲みやすく、また繊細なテロワールも出やすいことから好まれる精製方法です。

②ナチュラルプロセス

ナチュラルプロセス

表皮、果肉が着いたまま天日乾燥する。

「ナチュラルプロセス」はブラジル、イエメン、エチオピアなどでは伝統的に行われてきた精製方法の1つです。

コーヒーチェリーを表皮、果肉がついたそのままの状態で天日乾燥をし、脱穀をして中の種子を取り出します。とてもシンプルに見えるこのプロセスは、コーヒーチェリーの果肉やミューシレージがそのままの状態で乾燥することで特有の果実感、甘みが味わいに表現されます。熱狂的とも言えるほど一部のコーヒーラバーには人気があるプロセスのひとつです。

欠点豆や未熟豆、過熟豆の混入が多いとされてきましたが、昨今ではその問題点も改善され、た非常に高い品質のコーヒーがも増えています。


③パルプトナチュラルプロセス/ハニープロセス

パルプトナチュラルプロセス/ハニープロセス

ハニープロセスのミューシレージ残量による違い。明らかに色の違いが見受けられます。


ウォッシュトプロセスとナチュラルプロセスの良いとこ取りのようなプロセスがこの「パルプトナチュラルプロセス/ハニープロセス」です

途中まではウォッシュトと同じく、機械でコーヒーチェリーの表皮と果肉を除去します。その後、ミューシレージが付いた状態のまま天日乾燥。ミューシレージに含まれる甘さや果実味を残しつつ精製することで、ウォッシュトともナチュラルとも違う独特な味わいを表現できます。

厳密に言うとブラジルで伝統的に行われてきた精製方法が「パルプトナチュラルプロセス」。コスタリカでコーヒーの生産におけるマイクロミル革命が起きて一大マーケットになった「ハニープロセス」と分けることが出来ます。

「ハニープロセス」においてはミューシレージを全て残した状態で乾燥させるだけでなく、ウォッシュトのように水に漬けて一部除去して乾燥させたり、かなりオタッキーな調整が行われる精製方法でもあります。ミューシレージが何%残されて天日乾燥するかによって、100%残った状態はブラックハニー、50%程度がレッドハニー、20-30%程度がイエローハニー、10%未満程度がホワイトハニーと表現されています。(上記の写真参照。)

 

④アナエロビックファーメンテーション(嫌気性発酵)

その味わいはまさに衝撃。数年前からかなりの人気を博している精製方法です。

コーヒーチェリーを密閉式のタンクに入れ無酸素状態を作り、その状態でしか活動しない微生物を利用して味わいを作り出す精製方法がアナエロビックファーメンテーション(嫌気性発酵)です。

味わいはコーヒーとは思えないほどの果実味と発酵感があり、バナナやシナモンと表現されるほど特異なフレーバーを産みます。好みも大きく分かれますが衝撃的な体験になるでしょう。コーヒーの競技会でも多く使用されるほどに注目度の高い精製方法です。

また、このタンクに窒素や二酸化炭素を充填するカーボニックマセレーションなどもあります。どちらも管理が非常に難しく、発酵を超えて腐ってしまうなどトップグレードのコーヒーを失ってしまうリスクも多く難易度の高い方法です。

 

⑤ゴールドウォッシュプロセス

ここまできたらオタッキーを超えてギークな情報をひとつ。

ゴールドウォッシュプロセスは上記のアナエロビックファーメンテーション(嫌気性発酵)の変化系で、嫌気性発酵させたコーヒーチェリーの果肉と表皮を粉砕して果汁を生成します。その果汁にパーチメントを漬け込み密閉タンクで嫌気性発酵させます。

その後水で洗い流して完成。

果肉と表皮が粉砕して生成された果汁が黄色みがかっているので、ゴールドウォッシュと呼ばれています。味わいはマンゴージュースのような強烈なトロピカルフレーバーが感じられます。

このプロセスはまだ日本で聞くことはほとんどないかと思いますので、ほんの豆知識です。

 

さいご

さいごに

昨今のコーヒー生産国では、コーヒーを精製するときに出る汚水が環境に深刻な悪影響を与えることも報告されています。水の使用量をより少なく、さらに高いクオリティのコーヒーを精製できるよう生産国では日夜研究と実験を繰り返しています。私たちはそんな努力の結晶を日々の中で楽しむことが出来ます。

「発酵」の力でコーヒーの味わいは変わる。ウォッシュトプロセスで生産国の繊細なテロワールを楽しむ、ナチュラルプロセスで溢れる果実感を口いっぱいにする、アナエロビックファーメンテーションで衝撃の味を体験する。次にコーヒーを頼む時には「精製方法」に注目して選んでみてはいかがでしょうか?

きっと自分の好みのコーヒーに出会えるはずです。

ONIBUS COFFEEのオンラインショップにも個性溢れるコーヒーがたくさんあります!是非チェックしてみて下さいね!

執筆者:田崎将司