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『コーヒーノキを知る』その②〜生産地におけるテロワールとコーヒーチェリー収穫の話〜

『コーヒーノキを知る』その②〜生産地におけるテロワールとコーヒーチェリー収穫の話〜

猛暑だった8月もあっという間に終わり、気づけば朝晩涼しく感じる日も増えてきた日々。さてさて、秋といえばコーヒーシーズン突入です。

前回に続き今回のブログ記事は、「コーヒーノキ」についてのお話です。 前回はコーヒーノキの最適な生育環境についてのお話しでしたが、今回の内容は、その生育環境がどうコーヒーの味わいに影響を及ぼすのか、また、木に実る”コーヒチェリー”の収穫に関することに、もう少し焦点を当ててみます。ぜひじっくり読んでみてくださいね。

コーヒーノキが成長する基盤「テロワール」

コーヒーノキが成長する基盤である「テロワール」

スペシャルティコーヒーにはそう呼ばれる為の基準があり、定義として「From Seed to Cup」という言葉があります。コーヒー豆からカップまで一貫した管理が徹底していることが必須、という言葉なのですが、私たの焙煎や抽出技術はもちろん、遡って考えると生産国における環境や収穫方法などがコーヒーの味わいに大きく影響を与え、多くの人の手によって1杯のコーヒーが淹れられていることを改めて考えさせられます。(定義について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。)

スペシャルティコーヒーシーンでは「テロワール」という言葉があるのですが、これは、個性豊かな風味のコーヒーの味をつくる為に重要な要因の一つなのです。

「テロワール(Terroir)」とは”土地”を意味するフランス語”terre”から派生した言葉で、英語では「マイクロクライメイト」、日本語では「微小気候」と言われます。もともとはワインの世界で用いられてきた言葉なのですが、コーヒーの世界でもコーヒーノキの育成に欠かせない環境要因のことをそういいます。

実は、前回の記事でお話しした”育成に適した環境”の条件こそがこの「テロワール」に深く関係してきます。つまり「テロワール」とは、降雨量・気候・日当たり・土壌や標高などその国の生産地で各種コーヒーノキが育つ小さな範囲の環境のことで、これらの違いによって様々な個性豊かな風味のコーヒーができるのです。(コーヒーの生産国による違いの基礎知識については、こちらの記事をぜひ読んでみてくださいね!)

ですので、その国の微小な気候の違いによって育てられたコーヒーノキやコーヒーチェリーから作られるコーヒーを飲んだ時に感じる風味が、「テロワール」由来であることも忘れてはなりません。

この国のコーヒーの味が好きなんだよね〜となんとなく思っていることがあれば、それはもしかしたらその地域の「テロワール」が好みなのかもしれませんね!

生産地における収穫期の違い

生産地における収穫期の違い

コーヒーチェリーは農作物なので、適切な収穫時期があります。ほとんどの生産国におけるコーヒーチェリーの収穫時期は9〜10月なのですが、実際には国によってその時期は異なります。同じ作物なのに収穫時期が違うの?と思ってしまいますが、地球の北半球・南半球で季節は真逆になるので、国によって収穫期が異なることはよくよく考えれば当然のこと。世界中で採れる作物ならではですね。

まずは大きく分けて3つの収穫時期に分けられます。

①北半球・・・主な生産国:グアテマラ・ホンジュラス・エチオピア・など→10〜3月頃
②南半球・・・主な生産国:ブラジル・ペルーなど→4〜9月頃
③赤道直下・・・主な生産国:コロンビア・ケニアなど→年に2回

上記のような北半球・南半球での区分というのは、雨季と乾季のタイミングの違いによるものです。コーヒーノキは雨季に花を咲かせ、その後6〜8ヶ月かかって実をつけると言われています。そして季節は乾季になり、枝に実ったコーヒーチェリーの収穫時期となります。日本で言うと秋冬の季節。

さらに細かく分けると、国ごと、地域やテロワール、実が熟した順番、品種などによって収穫のタイミングは異なります。生産者たちは、コーヒーチェリーを摘み取るのに適切なタイミングを見極めて収穫するのです。

 

そして、”年に2回”収穫期がある国があることにお気づきでしょうか。ここで挙げたコロンビアとケニアは両国とも、赤道直下に位置する生産国です。つまり、国土の上を赤道が貫いているので、その赤道を挟んで北半球と南半球に分けられ収穫の時期が異なってくるのです。

例えば、コロンビアでは国土の大半が北半球にあるので、主に収穫できる北半球のチェリーを「メインクロップ*」、南半球のチェリーを「ミタカクロップ(サブクロップ)」と呼びます。

コロンビア図:コロンビアの国土を貫く赤道(赤いライン)

ケニアも同様に、「メインクロップ」と「フライクロップ(サブクロップ)」と呼び名が異なります。

*クロップ・・・コーヒー業界でいう、農産物としての生豆のこと。

コーヒーチェリーの収穫方法

コーヒーチェリーの収穫方法

コーヒーノキに実ったチェリーは収穫時期になるまで、緑から赤く熟していきます。チェリーが熟したタイミングで摘むのですが、1本の木になる全てのチェリーが一斉に赤く熟すわけではありません。日当たりや養分の届きやすい場所から順に熟していくので、枝に実るチェリーの色は緑や黄色っぽいもの、赤でもピンクっぽいもの、真っ赤なものなど様々な色をしています。

いかに熟度の高いチェリーを収穫できるかということが、コーヒーの品質や味わいに大きく影響してくるのですが、この収穫方法に関しても国や地域によって異なる方法があります。

・機械収穫
この方法は、巨大な機械で木を揺らして実を落とすので、一度に大量のチェリーを収穫することができ非常に効率的であることがメリットですが、コーヒーノキの間を機械が通れるような平坦で広大な土地が必要だったり、実だけでなく枝や葉っぱ、そして完熟していない実まで落としてしまいかねない、というデメリットもあります。

小規模農家や狭い農地では利用されず、条件の揃った国でのみ行われている収穫方法で収穫自体は効率がよくても、その後の仕分けにかなりの労力が必要となる為、時間や人員の確保も必要となり、結果として高品質なコーヒー豆を生産しづらい方法とも言えてしまいます。

・しごき収穫
この方法は、その名の通りコーヒーチェリーを枝ごとしごき取る方法です。標高の高い産地で栽培されることの多いコーヒーノキは斜面上に植えられており、機械が入ることは難しいことがしばしば。必然的に手作業になってしまうのですが、それでも作業を簡略化する為の方法がしごき収穫です。しかし、この方法も実だけでなく葉っぱや枝が混在してしまったり、完熟前のチェリーも一緒に採ってしまったりと、結果的に選別作業に労力がかかるといった点もあり、機械収穫同様のデメリットも発生してしまいます。

・手摘み収穫
この方法も文字通り、手作業による収穫方法です。しごき収穫と異なる点としては、チェリーをひとつひとつ、目視で選別しながら摘み取るといった点です。

先述のように、1本の木になる全てのチェリーは一斉に熟すことはまず無く、その中でもいかに熟度の高いチェリーを摘めるかということがコーヒー豆の品質において重要となってきます。手摘み収穫では完全に熟したチェリーのみを選んで収穫をしていくので、高品質になることが多いのです。しかし、その分収穫に非常に手間がかかり、収穫量=賃金とする農園において(収穫の繁忙期には「ピッカー」と呼ばれる季節労働者が出稼ぎにくるのです)は、結果収穫量を増やすために未熟なものも収穫されてしまうこともある、といったデメリットもあるのです。

上記のように、収穫方法だけでも様々。収穫されたチェリーはその後、選別や精製、そして輸出され海を渡り私たちの手元に届き、焙煎と抽出によってやっとコーヒーとして味わえるようになります。何度もお伝えしてきていますが、1杯のコーヒーが今私たちの目の前にあり、それが美味しく飲めるということは、本当に多くの人が関わり合って実現されています。とても感慨深いことです。

さいごに

さいごに

2週に渡りお話ししてきましたのは、「コーヒーノキ」に関しての内容でした。いかがでしたでしょうか。少し難しく感じる内容だったかもしれませんが、まだまだ一つ一つ掘り下げたい内容ばかりでもあります。(また追々話していきますね)

遠い国から私たちの元へ届けられるコーヒーに関しての興味を、目の前のカップのみだけでなく少しでもコーヒーノキの生体や生産国、生産者へと広げてもらえたら幸いです。

スペシャルティコーヒーを取り扱う私たちにとって、「サスティナビリティー」「トレーサビリティー」という言葉は切っても切り離せないものです。1杯のコーヒーを飲むことでその両方を実現し、いつまでも美味しいコーヒーを飲み続けられるようにと願いながらも、私たちにできることは積極的に行っていかねば、と改めて思うばかりです。

 

執筆者:小倉未紀