2021.6.17
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スペシャルティコーヒー焙煎完全解説!〜ONIBUSのローストプロファイル全部見せます!!〜

スペシャルティコーヒー焙煎完全解説!
スペシャルティコーヒー焙煎完全解説!‐ KV

スペシャルティコーヒーを浅煎りでおいしく焙煎するには、ただ単純に焙煎時間を短くするだけではなく、豆の持っているポテンシャルを最大限に引き出す必要があります。ONIBUSでは適切な焙煎度合いで「苦味」や「酸味」だけではなくコーヒー豆が本来持つ「味わい」をできるだけ感じてもらえるような焙煎方法を目指しています。

今回の記事では、オニバスコーヒー独自の焙煎を詳しくご紹介します。前回の記事と合わせて、お楽しみください。「スペシャルティコーヒー焙煎(ロースト)の基本知識

 

スペシャリティコーヒー焙煎の事前準備

さまざまな焙煎機や焙煎方法があり、色々な考え方がありますが、オニバスコーヒーでは焙煎機に設置されている温度計(ドラム内温度計と排気温度計)をパソコンと接続し可視化できるソフト「cropster」 を接続して使用しています。 このアプリケーションはローストプロファイルを可視化して、焙煎データをクラウドで保存してくれるものです。

焙煎を行う上で、最も重要な要素としては、一定にできる箇所や測定できるものは「数字として可視化し、把握すること」焙煎環境を整える」ことです。それは、デジタルやハードだけでなく、焙煎する人自身の体調やマインドも常にニュートラルな安定した状態を保つのが大切です。

その上で重要なフェーズを意識していくことで、焙煎の技術はより高まり品質の高いコーヒーを今よりも安定して焙煎できることでしょう。

https://www.cropster.com/ja/

では実際の焙煎を行うにあたり、注意しておくべきことをご紹介します。

焙煎時に気をつけること

・焙煎前の生豆の水分値を把握する
・生豆の温度を一定に保管する
・焙煎機をしっかりと温める
・ローストカーブと RoRレイトオブライズを相対的に読み取る

焙煎時間を決めるRoR (上昇率)について

焙煎時間を決めるRoR (上昇率)について

RoRとはRate Of Riseのことをいい、温度の上昇率を指します。焙煎中、釜内でどの様に温度変化が進行しているかを示す数値になります例えば、30秒の設定でRoRが5であるとします。それは30秒ごとに焙煎機の中の豆の温度が5度ずつ上昇していることを示します。RoRは温度の進み方を素早く読み解くために利用するのですが、これによりローストを上手にコントロールでき目的の焙煎プロファイルを作成することができます。

一般的には30秒から60秒で設定していますが、オニバスコーヒーではRoRを60秒で設定しています。

※RoRの温度は高いほど焙煎が早く進行していることを示し、 低い時は焙煎がゆっくり進んでいます。

また、焙煎開始直後の水抜きの時のRoRでは、温度が高いと、液体の濃度感が上がる傾向があり、カップはソルティな味わいになりがちです。1ハゼ前後でのRoRの温度調整で、甘さや酸質を調節することができるとも考えられています。しかし、それらは当然豆の種類、焙煎機の種類、環境によって左右されます。1ハゼから終わりまでのデベロップメントタイムのコントロールにもRoRは重要になってきますが、僕たちはあくまで”全ての工程で判断する”ことがが大切だと考えています。

ドライイングフェーズ(水抜き)

コーヒー焙煎には重要なフェーズ幾つかあると言われているのですが、その一つが水抜き、「ドライイングフェーズ」です。この時、気をつけなくてはいけないことがいくつかあります。

よくある間違いは、しっかり水分蒸発をしようと思い、火力を強く与えてしまうことです。初期の段階で水を抜きすぎると、後半の焙煎の化学変化に関わってきます。また、酸が熱で分解してしまうので味わいがフラットになってしまう傾向があります。またソルティな味わいだったり、ドライな印象になってしまうことがあります。その時は焙煎後のカッピングで判断してどのようにカロリーを与えるかを検討していく必要があります。

それ以外にもいくつか気をつけなければいけない事があります。焙煎初期に迎えるドライイングフェーズでは、生豆内部の水分が蒸気となって豆の外部に向かって逃げようとします。その作用によっておこるティッピングやドラムの接触面の熱で起きてスコーチングなどに注意をする必要があります。

スコーチング-焙煎豆の表面の焦げのことを言います。浅煎りの豆での表面の焦げは、熱せられたドラムとの接触面の時間が長いことや、釜の温度が高く熱すぎることが原因です。

ティッピング-複雑な要素が絡み合い起きる現象です。焙煎初期、蒸気が発生し豆の外に逃げるのですが、豆は内部の気圧が高くなり、豆の一番やわらかい先端個所から蒸気が放出されその箇所が黒くなります。これがティッピングの原因になると言われています。

スコーチングやティッピングを起こさない様に、適切な水分を蒸発させ、 これから迎える多くの化学反応に備える必要があります。

以上を踏まえて、実際の焙煎を見てみましょう。

実践!オニバスコーヒーの焙煎

では、実際にオニバスコーヒーが行っている焙煎を例に見ていきましょう。

今回は12kgの焙煎機に8kgエチオピア ウォッシュトの生豆を投入したとします。

まずはしっかりと温められた焙煎機にコーヒーを投入します。この時、焙煎機の釜内の温度計は200℃を示しています。生豆を焙煎機に投入すると、焙煎前の生豆は200℃だった焙煎機内の温度が急激に下がっていきます。温度が下がりきると、そこから温度上昇が始まる転換期(ターニングポイント)を迎え、ローストは徐々に進行していきます。

そこからはどういったローストカーブにしていくのか、そのためのRoR(上昇率)は何度にするのか、その温度にする為にはどのくらいのガスの強さで焙煎を行うのかなど判断しながら焙煎を行っていきます。

200度以上に温度を上げ、ガスを止め温度を下げていき200度で投入しエアーフローは30%に設定しています。
40秒前後、100度で火力は5.5(ガス圧系で)にします。
1分30秒でターニングポイントを迎え焙煎は徐々に進んでいきます。
1:30でターニングポイントを迎えRoRはこの時18~20℃/分ほどで上昇を示しています。
3:00で火力を4.5に
5:00で3.5に調整しています。
RoRとローストカーブを相対的に注意深く観察して、それぞれのグラフをコントロールしていきます。
6:00でガス圧を3
6:30で2に調整していきます。

RoRはスムーズに右肩下がりになるようにしています。

ドライイングフェーズ後、「メイラード反応のフェーズ」に入るのですが、生豆の色の変化(カラーチェンジ)は145度あたりで訪れます。194度でファーストクラックを迎えます。そこから急速に焙煎は進んでいき。「デベロップメントフェーズ」に入っていきます。ファーストクラックから1:00~1:10、205度で今回の焙煎は終了を迎えます。

デベロップメントフェーズ

デベロップメントフェーズ

ファーストクラックから焙煎終了までの時間をデベロップメントフェーズとなっています。このフェーズではメイラード反応は進み焙煎前の状態はとてもデリケートな状態になっています。より反応を起こそうと火力を少し強くしてしまうと、少し焦げた印象、火力が弱すぎてしまうとベイクドになってしまい、フレーバーが思ったように出なかったりしてしまいます。

プロファイルに話を戻していきます。
8:30(180度)でガスは1.5直後にダンパーを開きエアーフローは80%にしています。
メイラード反応フェーズに入った145度からファーストクラック前の194度の間では細かくガスを調整しています。今回の焙煎ではデベロップメントタイムは1:08で全体の11%を占めています。焙煎後のコーヒー豆のウエイトロスは11.13%になりました。

こうして焙煎を終えるのですが、気をつけて欲しいのは、焙煎のプロファイルは常に一定であるとは限りません、生豆が保有する水分の状況やスクリーンサイズ、その日の湿度、温度、天候、さらに焙煎機の清掃状況に大きく左右されます。同じ農園の豆でも去年よかったプロファイルが今年も適用されるとは限りません。焙煎したものは必ずカッピングを行いローストチーム、または各カフェスタッフからフィードバックをしてもらい焙煎に反映させて今よりもより良い焙煎を目指していきます。

カッピングでの改善例

カッピングのスキルは焙煎を行う上で最も重要なものです。特に品質の高いコーヒーは多くの風味特性を持っているので、多少失敗した焙煎でも美味しく感じてしまいます。またチームでカッピングのフィードバックをすることでより細かな味の変化に気づく事ができます。

例えば、最近のカッピングの印象でこもっている、開いていない印象の味わいだったので、イバンバーターでエアーフロー28から34へ空気の流れを変えてたり、生豆の水分値が高いものは最初の段階で火力を少し強くしたりしています。オニバスコーヒーではカッピングをしながらこのようなことを話して次回の焙煎に反映していきます。

まとめ

・焙煎機の種類や設置場所、えんとつの長さや形状、コーヒーの種類などで焙煎プロファイルは大きく変わります

・豆のポテンシャルを最大限に引き出し、ただ酸っぱい苦いだけで捉えるコーヒーの味わいでわなく、丁寧に作られらコーヒーの複雑性を楽しんでいただけるような焙煎を目指しています

・プロファイルは一箇所で判断せず、ローストカーブ、RoR、各フェーズを相対的に観察し判断しましょう

・環境はなるべく一定になるようにする。マシンやその周りの環境だけでなく焙煎士自身の体調やメンタルも整えておきましょう

今回解説した焙煎の温度やガスの数値などはあくまでもオニバスコーヒーに設置されている焙煎機での数値です。

今回のプロファイルはエチオピア ウォレカサッカローの焙煎プロファイルを参考にしています。バッチリ焙煎が決まったウォレカは本当に素晴らしい風味を感じる事ができます。

オニバスコーヒーオンラインショップでは様々な豆を取り揃えております。

ONIBUS COFFEE代表 坂尾

ONIBUS COFFEE代表 

スペシャルティコーヒーの魅力に取り憑かれ、自家焙煎のコーヒーショップを運営中。バックパックで旅をした時、カフェで経験した次の目的地に進む感覚を東京でも再現できないかを日々模索しながら、美味しいコーヒーショップがあることで、その街が豊かな街になると信じて活動中。

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