2026.6.18
  • スペシャルティコーヒー

私たちが選ぶコーヒーが、未来をつくる〜2026年ルワンダ訪問レポート:後編〜

私たちが選ぶコーヒーが、未来をつくる〜2026年ルワンダ訪問レポート:後編〜

前編からの続きです。後半は2年目の取引となるTriopoc Coffeeの先進性、これからのルワンダコーヒーについてみていきます。

先進的なTropic Coffee

 今年の訪問で印象的だったのはTropic Coffeeとの時間です。ONIBUSが長年に渡って取引していたBUF COFFEEから、いくつかのコーヒーウォッシングステーション(CWS、コーヒーを精製加工する場所)を引き継いだTropic coffee。昨年は簡単な顔合わせ程度しかできませんでしたが、今年は彼らのオフィスでのカッピング、農園訪問を通じて、信頼関係が深まったように思います。

 Tropicは、クリストフとディヴァイニ夫妻が代表を務めるサプライヤーです。妻ディヴァイニさんの母親であるエピファニーさんは、ルワンダで初めて完全ウォッシュドのスペシャルティコーヒーを生産した女性として知られています。ディヴァイニさんは若い頃から家族の一員として、コーヒービジネスに情熱を持っていました。夫クリストフさんはインドで気象学を学び、ルワンダのコーヒー業界で農業気候専門家として働いた経歴を持ちます。二人は2015年にTropicを設立しました。

 2024年、2025年に開催されたベストオブルワンダではTropicから複数ロットが2年連続で入賞しています。数百を超える農協や企業が出品する中、これは素晴らしい実績です。その秘密は、農学士による農家への手厚い教育、すべてのロットの品質確認と細やかなフィードバックだとクリストフさんは言いました。特に特殊精製(ハニー、ナチュラル、アナエロビック)に強く、各国のバイヤーのリクエストに応えることもしています。

 訪れた新オフィスにはカッピングラボが併設され(ルワンダでは自前のカッピングラボを持っていないサプライヤーも多いです)、現在は自社でドライミル(精製したコーヒー豆を出荷できる状態にする施設のこと。こちらも自社で所有するサプライヤーは珍しい!)も建設中ということで、Tropicのコーヒーはこれからも進化を遂げそうな勢いを感じました。

Tropicによって目覚めたチャト

 首都キガリから南西へ6時間。コンゴと国境を分ける雄大なキブ湖沿いのクネクネ道は、車酔い必至も相変わらず美しい風景が続きます。キブ湖の水辺には多くの生物が集まり、湖からの冷涼で湿潤な空気は、他のエリアとは異なる気候を作っています。西部ニャマシャケ郡にあるチャトが次の目的地です。ここにはTropicが所有するプランテーションとCWSがあります。チャトCWSは昨年初めて購入したCWSであり、今年のカッピングでもその品質の高さを確認していました。

 2021年頃に開かれたMure mureという名のプランテーションは22ヘクタール(東京ドーム5個分)という広大な面積で、標高2,200mほどの場所にあります。3つの区画に分けられ、自社所有の他、女性生産者グループや若年生産者グループの支援をしています。

 土の状態は良く、このエリアのポテンシャルを感じました。また虫や鳥やカメレオンまで多様な生物が暮らしていることも、この土地に豊かさをもたらしています。

 ピッカー(コーヒーチェリーを摘む人)として働くのは主に女性。しかも小さな子供をおんぶしながら、斜面をものともせず手際よく実を摘んでいました。休憩時間には授乳をし、たくましく子育てと仕事をしています。ここには7頭の牛がいて、糞を有機肥料にしたり、ミルクを子供たちに与えたりうまく共生していました。

 続いて谷間にあるチャトCWSへ。ドライングベッドが秩序整然と並んでいるのが壮観でした。よく手入れがされていることが遠目でもわかります。もともと別の所有者が始めたもののわずか3年で手放したCWSを、2018年にTropicが購入し今の規模まで拡大させたそう。その間には周辺に何万本ものコーヒーツリーを増やしたり、農家のモチベーションを上げたりと、多くの労力を払ったそうです。

 豊富な湧き水に恵まれたチャトでは、清潔な水を使ったフリーウォッシュトはもちろん、経験と知識に基づいてさまざまな精製方法がなされていました。意欲的に新しい精製や品種に取り組んでいて、これからルワンダのイメージを覆すようなコーヒーができることを予感させます。

これからのルワンダコーヒーへの期待

 気候変動、肥料の高騰は世界のコーヒー生産者が直面している課題です。これらへのレジリエンス(しなやかに対応し、乗り越える力)のため、生産者への還元を増やしエンゲージメントを高めるため、マーケティングのため、そして自然環境のために、よりリジェネラティブ(再生型)な農業が求められています。今回訪れたDukunde Kawa Musasa農協とTropic Coffeeはどちらもいち早くオーガニック・アグロフォレストリーへの移行を目指していました。ONIBUSはこうしたサプライヤーから生豆を購入することで、これからも一緒に美味しいコーヒーのある未来を作っていけるのではという希望を感じます。

 品種では歴史的・政策的背景から、長らくメインレッドブルボン種がメインでしたが、ここ数年でハイブリット種のRAB C15という品種も耳にするようになりました。病気に耐性があり、収穫量も多いということで期待される品種です。実際に政府が配布している苗の多くが、このRAB C15に置き換わったといいます。収穫量が増えることで農家には一定の恩恵があることは確かですが、品質面では、ルワンダらしい味わいが今後も守られるのかは未知数です。またルワンダ固有の品種であるミビリジ復活プロジェクトも佳境。どのような評価がなされるかでも今後のトレンドが変わってきそうです。

 「私たちが選ぶものが、未来を変えていく」大袈裟ではなく、確かにそれを感じる2026年のルワンダ訪問でした。

 

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