2024.5.30
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道玄坂にこの店がなかったら、渋谷の人たちは今よりちょっと寂しいと思う〜ALCB10周年インタビュー〜

道玄坂にこの店がなかったら、渋谷の人たちは今よりちょっと寂しいと思う〜ALCB10周年インタビュー〜

世界有数の繁華街・渋谷は、常にカルチャーの発信地であり、変化し続けています。そんな渋谷の道玄坂を登りきった角地にある、わずか5坪のコーヒースタンド『ABOUT LIFE COFFEE BREWERS(以下ALCB)道玄坂店』は、2024年5月31日に10周年を迎えます。

ALCBはONIBUSが運営するもう一つのブランドです。現在では道玄坂店の他、ベトナム・ホーチミン店、渋谷一丁目店の3店舗がありますが、1号店の道玄坂店がオープンした2014年は、今ほどスペシャルティコーヒーカルチャーが根付いていませんでした。

そこでALCBは、スペシャルティコーヒーが少しでも身近な存在になるように、「丁寧な一杯で、暮らしに豊かさを」をコンセプトに工夫を凝らして作られました。ONIBUS COFFEE以外のコーヒー豆も取り扱うマルチロースターにしたり、海外からゲストバリスタを招いたり、POP-UPや展示会をしたり、ONIBUS COFFEEとは異なるスタイルなのはそのためです。このようにして変化の激しい渋谷で、変わることなく、暮らしにスペシャルティコーヒーがある豊かさを10年間発信し続けてきました。

トラックがぶつかって店が破損し1ヶ月以上の休業を余儀なくされたり、コロナ禍で渋谷の街から人が消えたり大きなピンチもありました。それでもALCBが道玄坂にあり続ける理由とはーー道玄坂店マネージャーの池田さんに聞きました。

プロフェッショナルだけど壁を感じさせないALCBに憧れた

プロフェッショナルだけど壁を感じさせないALCBに憧れた

『約10年前、誰かの毎日に関われるような仕事がしたいと飲食業に興味を持ち、北海道から上京してカフェで働いてた頃、コーヒーに詳しい同僚が「絶対に行った方がいい」と教えてくれたのが、まだできたばかりのALCBでした。

行ってみると、目つきの鋭い男性スタッフ二人がカウンターにいて、”怖い”というのが第一印象。でも、そこで飲んだハンドドリップがとても美味しかったのです。当時は、スペシャルティコーヒーとか浅煎りとかよくわかっていなかったけど、おかわりするほどするする飲めるコーヒーだったのを覚えています。なんでこんなに美味しいのだろうと思って、勇気を出してスタッフにコーヒーのことをいろいろ質問してみました。すると、初めて来た素人の私に、惜しみなくなんでも教えてくれたのです。プロフェッショナルな雰囲気は威圧感を覚えるくらいだったけど、コーヒーという共通点があれば壁を感じさせないスタイルがとにかくかっこ良かったです』

この出会いをきっかけに、その後、地元に帰ってカフェで働いているときにも、ALCB=ONIBUSのコーヒーを取り扱うことに。産地のことや抽出のことなどコーヒーに関する様々な質問に、いつでも親身になって答えてくれるONIBUS・ALCBチームに信頼感を募らせていったそう。コーヒー豆の納品書に添えてある手書きのメッセージや、年賀状などでもコミュニケーションを続けていました。

『北海道の店は、立地柄、繁忙と閑散の差が激しいです。閑散期には、まとまった休みが取れるので、上京してONIBUSでトレーニングを受けたこともありました。そうしているうちに、「私も、プロフェッショナルで信頼されるようなバリスタになりたい、ONIBUS・ALCBで働きたい」と思うようになりました。それを当時のALCBのスタッフに伝えたら「まじで?(笑)」みたいになってたけど、どうにか2016年の8月にONIBUS・ALCBの一員になりました』

厳しさと優しさを受け継ぎたい

厳しさと優しさを受け継ぎたい

『憧れの店で、いざ本格的にコーヒーの仕事をはじめてみると想像以上に厳しかったです。何か聞くと「学校じゃねーんだから(自分で考えろ)」と言われたり。入る前はあんなに親身だったのに(笑)。今は違うけど、当時はそんな感じでした。でも「コーヒーでご飯を食べる」と覚悟を決めて再び上京してきたし、ずっと憧れていたお店だったし、厳しいことを言う先輩たちも実は見守ってくれているのもわかるから、恩を仇で返したくないと思って修行してきました。他のスタッフも、ALCBやONIBUSに憧れて入ってきて、みんな真剣にコーヒーがしたいという想いが同じだったから頑張れたのもあります』

厳しさの中にも優しさを感じたという池田さん。真摯にコーヒーに向き合うかっこよさや、接客での言葉遣いなど、その頃に教わったことは、技術だけでなくコーヒーのプロであるために大切な心得。今でも生きていると付け加えます。

『今は新しいスタッフが増えて、世代交代してきた感じもあります。ALCBは真剣にコーヒーに向き合える場所だし、コーヒーや人に対して愛があるお店。良いところを継承して、スタッフみんなが「ここが自分の店」だと思えるようなお店にしたいです』

道玄坂の日常を作ってきた誇り

道玄坂の日常を作ってきた誇り

近隣のオフィスや店舗で働く人、国内外からの観光客、渋谷には常にたくさんの人が集まります。そんな多種多様な人たちの日常に溶け込むように、美味しいコーヒーを届けるのがALCBの使命。そして、そのことが感じられる瞬間に、池田さんはALCBに立つ誇らしさを感じると言います。

『タンブラーを持って毎朝同じ時間に来る人や、ランチタイムに寄ってくれる人、通りがかったときに挨拶を交わせる人がいると、ALCBがあることでコミュニティができていると感じます。みんなそれぞれの仕事や生活があるけど、一息つきたいときにここに来るのは一緒みたいな。渋谷という場所柄、海外からのお客さまもとても多いです。ここで美味しいコーヒーを飲んだら、慣れない異国の地にも自分の居場所ができたような気持ちになってくれるみたいで、東京に来る度に絶対帰ってきてくれる人もたくさんいます。こうして、コーヒーを通じてたくさんの人の日常に寄り添える存在になれていることが誇らしいです。もし10年前に道玄坂にALCBができなかったら、渋谷の人たちは、今よりちょっと寂しいと思う』

今も上がるコーヒーへの熱量

今も上がるコーヒーへの熱量

10周年を迎えるALCBでの楽しかった思い出を尋ねると、今が一番楽しいと返ってきました。

『ALCB道玄坂では、最初の頃からポップアップや展示をしてきて、たくさんのアーティストと繋がりができました。周年の時に必ずグッズを作るのがALCBの文化。10周年でももちろん作ります。自分がマネージャーになってグッズを手がけるのは今回が初めてなのですが、これが大変だけど本当に楽しい。今年のグッズデザインを担当してくれるオオクボリュウさんは、ALCBのお客さまであり、アーティストとしてもALCBの数々のグッズデザインやPOP-UPをお願いするなど長く深く親交のある方。お店ではカジュアルに話せる仲ですが、今回一緒に仕事をしてみて、オオクボリュウさんの物作りへ一切の妥協も許さない姿勢に、尊敬と感謝の気持ちが尽きません。同時に、私たちがコーヒーや飲食を仕事にする上で持っている、”もっと良いもの=美味しいものを作りたい”という追求心と、そのために妥協をしてはいけないという想いは、プロフェッショナルとして同じだと実感しました。オオクボリュウさんの仕事に触れて、私もコーヒーの仕事への熱量がさらに上がりました』

10周年記念グッズはTシャツ以外も

記念グッズ

そうして完成した10周年を記念するアイテムは、定番のTシャツだけではありません。さりげないワンポイントになるアクリルキーホルダーや、おうちでもALCBを感じていただくためのクッションと豆のセットも作りました。

10周年当日の5月31日からALCB道玄坂店で販売開始です!ラインナップはぜひお店でチェックしてください。一部はオンラインショップでも販売しますので、遠方の方はこちらをご覧ください。

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オオクボリュウ氏からのメッセージ

『僕は3周年の頃からアバウトライフ愛好家であり、グッズのコラボレーションもしてきたので、今までアバウトライフで見てきた風景や出会った人々をイメージして自分にとって象徴的な絵を描きました。みんなにとっても思い出のグッズになったらいいな。おめでとうございます!』

Ryu Okubo(オオクボリュウ) プロフィール:

2011年にアニメーションによるミュージックビデオを制作したことをきっかけに、アーティストとしての活動を開始。現在は、より自由な表現の可能性を求め、ドローイング、 ペインティング、映像、デジタルなど、様々な手法を駆使して「シーケンシャルアート=連続性のある芸術表現」に取り組む。手法の延長として、2021年よりビデオゲームの制作を開始。これまでにBenny Sings、Mndsgn、星野源、PUNPEE、鈴木真海子、STUTSといった数々のミュージシャンに作品を提供してきた経歴を持つ。 個展に、「1:40:03:02-1:40:06:04」(2024、INS Studio)、「Struggle In The Safe Place」(2022、PARCEL) 、「Like A Broken iPhone | アイフォン割れた」(2016、CALM & PUNK GALLERY)。出版物に、「まいにちたのしい」(2019、ブロンズ新社、環ROY、鎮座DOPENESSとの共著)。

10年目も変わらずにあり続けること

10年目も変わらずにあり続けること

この小さなコーヒースタンドの窓からコーヒーを手渡し続けて10年。

「誰かの毎日に寄り添って応援できるような仕事がしたかった」という池田さんの願いを具現化するように、今日もALCBでは丁寧に作られた一杯のコーヒーを通じて、半径5メートルで活動している人から世界まで、誰かの日常に豊かさを提供しています。


interview and photo by Mai Yamada

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