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コーヒー生産の課題”肥料不足”解消に挑む〜ルワンダでソイルプロジェクト〜

 コーヒー生産の課題”肥料不足”解消に挑む〜ルワンダでコーヒーパルプコンポスト〜

2023年6月、ONIBUS COFFEEは生豆の買付と生産現場の視察のため4年振りにルワンダを訪れました。実はこの訪問には、もう一つ大きな目的がありました。それが『ソイルプロジェクト』の本格始動です!

ONIBUS COFFEEのビジョンである「コーヒーで、街と暮らしを豊かにする」を実現するために、私たちが今まで考え実践してきたことがたくさんあります。それがコーヒー生産国の課題解決に役立つかもしれない!そんな大きな可能性を持ったプロジェクトです。

世界的な農業の課題”肥料の高騰と不足”

世界的な農業の課題”肥料高騰と不足”

2021年頃から、世界的に肥料価格の高騰や肥料不足が問題となっています。

主な理由はふたつ。ひとつは化学肥料輸出国の社会情勢。中国では環境対策のために肥料の生産と輸出を制限、そこに追い討ちをかけるように2022年のロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。ロシアやベラルーシも化学肥料を多く輸出している国ですが、軍事侵攻の影響で供給が滞ったり、輸入国による経済制裁が肥料価格の高騰を加速させました。

そしてもうひとつが、世界的な人口増加による食料の需要の高まりです。飢餓を防ぐためには食料の生産量を上げなくてはいけません。それに伴って肥料の需要も高まり価格が上がっているのです。

みなさんご存知の通り、コーヒーも農作物です。

肥料不足の影響は、コーヒーの収穫量と品質どちらにも及びます。私たちがコーヒー豆の買付で訪れているルワンダも例外でなく、この肥料不足問題に直面しています。ルワンダでは政府の農業機関からコーヒー農家に配布される肥料の量が少なくなり、生産者が購入しようとしても価格の高騰で十分な量を確保することができません。またルワンダではコーヒーの生産に適した丘陵地では土壌の流出による養分低下や有機物の減少といった劣化も見られています。肥料の力なくして、良質かつ収穫量の多いコーヒーの生産を継続していくことが今後困難になる可能性もあります。

課題解決のために私たちができること

課題解決のために私たちができること

このままでは、今のように美味しいコーヒーを気軽に楽しめなくなってしまうーー。

コーヒーをビジネスにしている身としても、いち消費者としても、この問題は決して他人事ではありません。では、消費国にいる私たちに何ができるでしょうか?

真っ先に思いつくのは金銭的な支援かもしれませんが、世界的に高騰傾向が続き、あらゆる農作物が影響を受けている中、効果は極めて限定的かつ根本的な解決策にはなりません。ならば、生産者が自分たちで持続可能的に肥料を賄える方法があれば、解決の手立てになるのではないかと考えました。そこで、現在ONIBUS COFFEEが運用しているコンポストの手法を用いて、自家製有機堆肥を作り土(ソイル)を豊かにする試み=ソイルプロジェクトをルワンダのコーヒー農協と一緒に開始することにしました!

ソイルプロジェクトの舞台

コーヒーパルププロジェクトの舞台

今回のルワンダにおけるソイルプロジェクトは、ルワンダ北部にあるDukundekawa農協の協力で取り組んでいます。Dukundekawaはオーガニック認証やレインフォレストアライアンスなど環境保全に関する認証も複数取得する農協です。Dukundekawaで生産されるコーヒーは品質も素晴らしく、私たちも毎年コーヒー豆を購入しています。そんな繋がりもあり、ありがたいことに今回のソイルプロジェクトも快く引き受けてくれました。

まずは農協のマネージャーのアーネストさんとアグロミニスト(農学士)のクレオファスさんに、パルプコンポスト作りに必要な材料や基材の作り方を伝え試作を行ってもらいました。

未利用材の”パルプ”を有効活用

未利用材の”パルプ”で作る有機堆肥

”自分たちで持続的に自給できる堆肥作り”が今回のポイントです。そのために、材料はルワンダ国内で調達できるものだけを使用しています。そこで重要な原料となるのが「パルプ」です。

パルプとは、皮と果肉の部分のこと。コーヒー豆を精製する際にコーヒーチェリーから取り除かれます。

他の果実と違い、果肉ではなく種を食用するコーヒーでは、パルプはあくまでも副産物。そのままコーヒー園やバナナ園に撒かれたり、カスカラティーとして食用に加工されることもありますが、その大半は生産国で廃棄されています。処理が適切でないと、腐敗して土壌や水質汚染を引き起こす場合もあるそうです。

コーヒーパルプコンポストは、パルプの有効活用を叶えながら、さらに土壌環境の改善にも効果が期待できるのです。

コーヒーパルプコンポストの作り方

コーヒーパルプコンポストの作り方

まず作るのが”基材(床材)”と呼ばれるパルプの分解を担う菌や虫などの微生物の住処となるものです。ルワンダ国内で準備してもらった「籾殻」「米糠」「落ち葉」を混ぜて水を加えて作ります。

2023年のルワンダ訪問時には、この基材の仕込みを地元の農家のみなさんと一緒に作りました。材料の割合や、適切な水分量の測り方、攪拌するタイミングなどを一緒に確認していきます。

数日後に再び、基材の様子を観察してみると、温度が上がり菌糸が張っているのが確認できました!これは微生物の働きが好調であることを意味しています。

この基材にパルプを混ぜ込んで、数週間〜数ヶ月かけて分解するとパルプコンポストになります。赤い実の形をしているパルプは、微生物の力で形も色も残さないほどに分解されます。こうしてできたコンポストをコーヒーツリーに施肥します。

その後パルプコンポストの成分を調べてもらったところ、窒素とリン酸の数値が高く測定され、肥料としての効果が期待できることがわかりました。試作したパルプコンポストを蒔いた場所を今回の訪問で案内してもらったのですが、他の場所に比べて表土が柔らかくなっており、コーヒーツリーの葉の緑色が濃くツヤがあり健康的になったという結果も現れていました!

今後の展開

今後の展開

試作の結果、パルプコンポストにはコーヒーの生育に好ましい効果が期待できることがわかったため、引き続きDukundewaka農協で本格運用をしていきます。まずは、来期の収穫に合わせてパルプコンポストの作成とコーヒーツリーへの施肥を実施予定です。パルプコンポストによる影響のより詳しい検証のため、施肥をするエリアを区分し、無施肥エリアとのコーヒーチェリーの収穫量と品質の比較をします。
将来的には、 ルワンダ国内の他のコーヒー生産地域でも、経済的・技術的に自家製有機堆肥が持続的に運用でき、土壌環境の改善とそれに伴うコーヒーの品質向上に役立つことを期待しています。ONIBUS COFFEEがこの数年かけて取り組んできた生産者との関係作りや自然への取り組みが、コーヒー生産という源流に還ってきてワクワクする気持ちがやみません。生産者にも消費者にも環境にも良い成果になるといいなと願っています。結果は来年以降のお楽しみ!期待して待ちましょう!

そして、このプロジェクトを支えるための企画も現在準備中です。みなさんも参加できる企画ですので、こちらもお楽しみに。

text and photo by Mai Yamada