奥沢に吹く新しい風『ミヤチ商店』爽やかにOPEN〜ONIBUS OG訪問 Vol.3〜

　2024年7月に、12年半の営業に幕を下ろしたONIBUS COFFEE奥沢店。ここで長らくマネージャーを務めていた宮地佑季さんが、場所とストーリーを引き継いだ『ミヤチ商店』が、10月14日にプレオープンを迎えました。

　店名の通り、普段は宮地さん1人で切り盛りするミヤチ商店ですが、プレオープンの日にはONIBUSスタッフの南幅がお手伝いさせていただきました。プレオープンの様子とともに、たくさんのこだわりが詰まったミヤチ商店をご紹介します。

念願の自分のお店を持って

南幅：まずはミヤチ商店プレオープンおめでとうございます！

宮地さん：ありがとう！ONIBUS COFFEE奥沢店を譲っていただいてからこの数ヶ月、さまざまな準備を経てやっとの思いでオープンすることができました。ここまでサポートしてくださった皆さま本当にありがとうございます！

南幅：独立をされるまでにさまざまな経験をされてきたと思います。コーヒーを始めようと思ったきっかけはなんですか？

宮地さん：私は新卒で病院勤務をしていました。数年働く中で自分の現状に疑問を抱き、映画が好きで海外に住みたいと思っていたこともあり、27歳の時にオーストラリアへワーキングホリデーに行きます。その時に働いていたシドニーのジェラートショップで初めてスペシャルティコーヒーに出会い、コーヒーの美味しさや奥深さに感動しました。そしてそれ以上に、その店とコーヒーの存在が、来店されたお客さまの日常を明るく豊かなものにしているという事が印象的でした。それがコーヒーを始めたきっかけです。日本に帰国する際、ジェラートショップのオーナーに日本のおすすめのコーヒーロースターを聞いたところ、教えてもらったのがONIBUS COFFEEでした。

南幅：元々独立したいという願望はありましたか？

宮地さん：そうですね！オーストラリアから帰ってきた当時から、自分のお店を持ちたいと思っていました。ONIBUSの面接でも篤史さん（ONIBUS代表・坂尾）に伝えていました。そこからいろんなきっかけがあり、私がマネージャーを務めていた奥沢店を譲ってくださることになりました。このような形で独立や成長を全力で応援してくださった篤史さんとONIBUSの皆さんには感謝しかありません。

◾️より詳しい経緯や思いについてはこちらの記事へ【ONIBUS奥沢12年目のハッピーエンド〜受け継がれる場所と想い〜】

ついに迎えたプレオープン

南幅：プレオープンの日は、絶え間なく多くの方々に来店していただきましたね！

宮地さん：お店の設計・施工に携わってくださった方々、デザイナーの方々や、家族親戚友人からONIBUSのみんなまで！自分が思っていた以上に沢山の人が来店してくださいました。お祝いのお言葉もたくさんいただき本当に幸せな気持ちになりました。そして、改めてこれからお店を経営していくという責任感と高揚感を感じることができました。

南幅：僕はONIBUS COFFEE奥沢店の最終日の営業にもヘルプで参加させてもらいましたが、その際に来てくださった常連のお客さまたちも数多くいらしてました！

宮地さん：そうなんです。奥沢店は数多くの常連さんたちに支えられてきたお店です。お店の形は変わりましたが、変わらずこの場所を好きでいてくれて本当に感謝しています。

南幅：この日はウェルカムドリンクとして、コーヒーとビールを振る舞いました。ミヤチ商店で提供するメニューについて教えてください。

宮地さん：エスプレッソはONIBUS COFFEE奥沢店時代と変わらずONIBUS BLENDで提供します。他にはオープン記念として、コスタリカモンテコペイエルアルコン農園のレッドハニープロセスも用意しました。この日のために特別に焙煎してもらいました。甘栗のようなほっこりする甘さで、秋らしさを感じる落ち着いた味わいです。シングルオリジンもこれまでと変わらずONIBUSのものを提供していきます。ビールは私が通っているクラフトビールショップから、カナダのブルワリーであるCollective ArtsのDry Hopped Sourをセレクトしました。とても飲みやすくてジューシーな酸味が特徴のビールなので今の気候にぴったりです。

南幅：かなりの数のお客様がビールを注文されていましたね。まるでビールスタンドのようでした笑

宮地さん：想像以上に需要があるということに驚きました。同時に、嬉しさもありました。自分の好きなブルワリーとスタイルを繋ぐことができるのも個人店ならではだと思います。今後もさまざまなスタイルのタップをつなぐ予定なので楽しみにしていてください！

南幅：他にもヴィーガンのカヌレとバナナブレッドも販売されていました。

宮地さん：奥沢時代から定番のカヌレと合わせて、新たにヴィーガンバナナブレッドを開発しました。ONIBUS COFFEEのバナナブレッドをベースとして、卵を豆腐に置き換えるなど配合を再調整しました。召し上がっていただいた方々からもご好評いただいています。 ONIBUS COFFEEのバナナブレッドと食べ比べも面白いと思います！季節に合わせていろいろなお菓子を開発予定ですのでお楽しみに。

「好き」と「想い」が詰まった店作り

南幅：すべてのものに宮地さんの好きなものが詰まっていて素敵です！お店の設計についてこだわったところや、気を遣ったところはありますか？

宮地さん：内装で特に気を遣ったのは視線の抜けと動線です。1人で営業するお店なので、私がどこにいても全てのお客さまが見えるようになっています。お客さまとのコミュニケーションを大切にしていきたいと考えているので、どの場所から話しかけられても会話ができるよう工夫されています。

ONIBUS COFFEE奥沢店はほとんどテイクアウトのみの営業でしたが、ミヤチ商店ではイートインのお客さまが利用できる席と立ち飲みスペースを用意しました。どちらのパターンでも心地よく利用していただけるよう、テイクアウトのお客さまとイートインのお客さまが自然と違う動線となるような設計になっています。

また、カウンターやベンチなどは、以前使っていたものを再利用しています。今まで使ってきた物をリメイクすることによって、思い出として残すことができとても良かったと思います。

南幅：一見、気が付かないようなところにも想いが込められているんですね。他にも店内で飲むカップや特徴的な店内タイル、ロゴデザインなど随所にこだわりを感じました！

宮地さん：コーヒーカップもオリジナルで作っていただいたのですが、ブラック用とラテ用でカップを分けています。内側に注目してもらうとわかると思いますが、ブラック用はコーヒーの色が綺麗に出るように明るい釉薬、ラテ用は茶色の釉薬をつかっています。飲む前から液体が綺麗だとテンションあがりますよね。

ロゴデザインは、以前私が友人に「爽やかな風のような人だね」と言われたことがインスピレーションとなっています。周りの人達が思ってくれる私の第一印象と、店の目の前に見える線路沿いの柵との親和性がある、素敵なデザインに仕上がりました。

南幅：ハツラツとして明るい宮地さんにピッタリのロゴデザインになっていると思います！

宮地さん：タイルはカーブタイルを随所に使用しています。タイルを作成していただいたメーカーさんとしてもこちらを使用するのは初の試みで、職人さんもこんなタイルは初めて見たと驚かれていました。メーカーさんも職人さんも初めてだという素材は、お店の独自性を打ち出していくためにもぴったりで、ロゴの形とも同調するデザインだったので選びました。

他にも、テイクアウトカップの資材や、お菓子に使う素材や、オリジナルTシャツのことなど語ればきりがないです！是非お店に来店していただきご説明させてください！

南幅：さいごにプレオープンの感想と、これからミヤチ商店で目指すものを教えてください。

宮地さん：まずは、ご来店していただいた皆さま本当にありがとうございました。自分がこの場所でミヤチ商店を営む意味と必要とされていることを実感することができて本当に幸せな気持ちです。

ミヤチ商店は、「来るとちょっと元気になれるお店」をコンセプトにしています。コーヒーとビールとお菓子、自分の好きなものとストーリーを通してきた人に幸せになってもらえて、近所のコミュニティスペースとなるお店を目指していきます。

皆さまのご来店を心からお待ちしております！

街の豊かさを作る場所

　プレオープンの1日は、常に人が途切れることなくさまざまな人々が来店されていました。中には朝と夜の2回来店される方も。皆さん思い思いにコーヒー、ビール、お菓子、そして宮地さんとの会話を楽しんでいて、終始穏やかな暖かい祝福ムードに包まれていました。この光景を見て、ONIBUSのビジョンである「コーヒーで、街と暮らしを豊かにする」ということが、お店の形を変えても受け継がれているということを強く感じました。そして、その豊かさは、働くその人の魅力があってこそ成り立つものであることも感じることができました。宮地さんだからこそ表現できる「ミヤチ商店」というお店の価値。そして、それに共感する街と人々に必要とされていく未来を見ることができました。

　このプレオープンを経て、2024年で一番月が地球の近くにいて、大安で寅の日の10月17日にミヤチ商店はグランドオープンしました！ぜひ一度訪れてみてください。

text by Jumpei Minamihaba