- サステナビリティ
みんなで育てるサステナブルの種vol.3〜コーヒーが抱える問題と私たちにできる選択〜
こんにちは、那須店の桑原です。最近は気温も上がり過ごしやすい日が増えてきましたね!那須店の桑原と自己紹介しつつ、ここ数ヶ月は東京出勤も多くなり、那須と東京を行ったりきたりするパタパタした日々を送っています。
そんな最中ですが、那須で行われているサステナブルワークショップ最後の第3回目に参加してきました!ブログでも過去2回のワークショップについてお話ししてきましたが、今回3回に渡って行われたワークショップの集大成としてお届けしたいのは、”コーヒーに携わる上で避けては通れない課題3選”です。
前回までのワークショップで私たちが大切にしたいこととして上がっていたのが、「食の安全性」「持続可能な原料調達」「ゼロウェイスト」「働き方」など。私たちが抱える課題は、コーヒーという視点に絞っても、実に多角的で広範囲に渡ります。その課題を認識した上で行動に繋げることは非常に意味があり、さらに自身のライフスタイルや価値観と最も合う手段を取れるならこの上なしですね。ぜひ、自身が問題と思っていることと重なっているか、自分ならもっとこんなことが大切だと思う、など考えながら読んでいただければ嬉しいです。
コーヒーに携わる上で避けては通れない課題とは
今回行われたのは、前回までに使用した「マテリアリティ(重要項目)」14項目に加え(前回のブログ)、自身がどれを重要視しているかという自分の価値観を探るワークショップ。前回までのマテリアリティを認識した上で、お金・権力・達成感・誠実・自由など、その他の自己記入を含む34項目の中で、いち個人として生活する上で、どのようなことを大切に考えているのかを見つめる時間になりました。
私が選んだのは「心身の健康」「何かに貢献する」「良質なコミュニケーション」でした。私はよくわからないミラクルなミスを起こしがちなのですが、平和に生きていたいと切に願いながら日々を過ごしていることが、よく現れた3項目だったなと思っています。
さて、私のことはさておき、”コーヒーに携わる上で避けては通れない課題3選”とは一体何なのか。以下に紹介していこうと思います。
1、持続可能な原材料調達
みなさんご存知の通り、コーヒーは主に赤道付近に位置する国々で作られる農作物です。「コーヒー」と一括りにしても、ロブスタ種があったりアラビカ種があったり、やはりコーヒーの中にも違いがあります。その中でもコモディティ市場に出回るものと、その枠を超えて取引される認証コーヒーやスペシャルティコーヒーが存在します。
生産者と消費者の関係性
特に高い品質を持つと認められたスペシャルティコーヒーは、メインの生産国と消費国が異なる少し変わった品物です。もちろん生産国にもスペシャルティコーヒーショップはありコーヒーを楽しむこともできますが、基本的にその多くはより利益になる場所、つまり先進国(メインマーケット)へと輸出されて来ます。
生産することを”持続可能”にする為にも、生産者の方は日々より美味しいコーヒーを作ろうと試行錯誤する一方で、買い手に人気があるのはどんなコーヒーかを意識して素材や生産方法を試す側面があるということです。
また、どれだけスコアの高いスペシャルティコーヒーがあったとしても、そこに児童労働が認められれば、そのコーヒーを購入する事はありません。私たちがNOを提示することにより、「適切な労働環境の元で生産されたコーヒーが買われる」という認識が作れれば、そこに関わる全員で環境を改善していける可能性があるからです。品質が高いコーヒーに対してその生産者へ品質に見合った価値を支払うことができるのが、スペシャルティコーヒーの特徴です。農作物なので収穫量が予測できないこともありますが、顔が見えて信頼できる関係性を築くことで計画性をもった購入が可能になるという点でも、持続可能性に一役買っている取引の仕組みです。
このような側面を考えると、私たちの選択こそ持続可能性への影響力があるということは忘れたくないですね。
土壌の重要性
また、持続可能性を語る際に重要であるもう一つの項目は、”土壌”です。コーヒーや農作物を育てる際、何年も化学肥料を使用して農作物が育てられた土地では土が疲弊しているためにゆくゆくは何も育たない場合があります。かといって一旦土地が農薬漬けになった土壌の化学肥料を抜くためには、雑草を植えては抜く作業を繰り返すことになり、土壌が正常に戻るまで年単位での時間がかかります。
この様な状態を作り出さないために有効な手段の一つが、オーガニック農法です。これは化学薬品を使用しない方法であり、コーヒー農園の生態系のみならず生産者自身や土そのものを保護する方法です。しかし、オーガニック農法は化学肥料を使用した時に比べ農作物がかかる病気や虫の被害を予防することが難しいため、生産者にとっては収穫量を天秤にかけるような生産方法でもあります。一般的にコーヒーは実をつけるまでに約3年程かかる植物で、より高い品質のものを生産しようと思うほど、その工程は負荷がかかります。また、育てても食卓に並ぶ食料になる事はないので、コーヒーが売れなければ転作し、カカオ・バナナやユカ、場合によっては麻薬の原料の為の畑へと転じてしまうのです。ですので、収穫量を維持するための土壌を作ることも、コーヒーを栽培することの持続可能性には大きく関係しているのです。
上記の点から、私たち購入者が、コーヒー豆の品質だけではなく生産過程を良く見極めて購入することではじめて、原材料調達の持続が可能になると言っても過言ではありません。
2、エネルギー管理
一般にコーヒーやその他の食料が私たちの手元に届くまで、多くのエネルギーが使われています。
ざっくり例をあげると、収穫したコーヒーチェリーを加工するために使われる水や、乾燥させたコーヒー豆を港・ロースターに運搬したり消費国に輸送するために使う燃料、コーヒー焙煎時に使用するガス・電気などです。コーヒー豆のみで考えた場合にもこれだけのエネルギーが使われています。この中でも、コーヒーで使われるエネルギー問題を考えた際、意外と見落とされがちなのがコーヒーを焙煎する際に排出される二酸化炭素です。焙煎時には熱量が必要であり、現在でも多くの場合ガスを使用して焙煎を行っています。
二酸化炭素は、化石燃料を燃やした際に発生するので、私たちが生活する上でひっきりなしに排出されています。加えて、この二酸化炭素は保温性が高いので、二酸化炭素が増えすぎると今以上に地表温度が上がるため地球温暖化へと繋がります。
コーヒーを含む農業に影響を及ぼしている気候変動の大きな要因である二酸化炭素が、コーヒーを焙煎することにより多量に発生している事を考えると、複雑な気持ちになります、、。それゆえに、私たちも真摯に向き合って行かなければいけない課題が”エネルギーの管理”なのです。
現在コーヒーロースターで使用されている名だたるブランドの焙煎機は、環境問題が叫ばれる以前の20世紀に作られたデザインが改良されてきているものも多いです。その為もあってか、同じ味わいを再現しつつコーヒー焙煎時の二酸化炭素を減らす有効な方法が普遍的に確立されていないのも事実。ONIBUS COFFEEでは焙煎間のガスやバーナーのスイッチを細かく消したりしています。ちょこちょこした動きになりますが、無駄なガスを使わないというモットーの元行われています。(笑)
しかし、主だった焙煎機メーカーの中で近年、Giesenなどは電気を主力として焙煎ができる焙煎機を開発していたり、水素焙煎というガスを使わない焙煎方法が日本でも開発されている事を省みると、私たちは今コーヒー焙煎に使用されるエネルギーが変わる、という過渡期にいるのかもしれません。
3、ゼロ・ウェイスト(もしくは労働環境/コミュニティ支援)
ここで改めて、「ゼロ・ウェイスト」とは、ゴミを0に減らすことを目的とした活動のことを指します。ここにも、様々な取り組み方が存在します。
例えば、コーヒーを持ち帰りした際に出るテイクアウトカップの代わりにリユースカップを使用し、そもそもゴミを出さない取り組み方。また、プラスチックニュートラルに代表されるような自分で使った使い捨て資源と同量の資源をリサイクルに出すという取り組み方。二酸化炭素に関して言えば、同様にカーボンオフセット(自分たちが排出した二酸化炭素と同量を別の手段で削減する取り組み)などもあり、一様にルールが決められているものではありません。
以前のブログでも多く紹介されていますが、不要なゴミを出さないことや可能な限りのリサイクル素材を使用することは、ONIBUS COFFEEでも重要視していることです。コーヒーを買う時に店内で飲むならばグラスを使う、テイクアウトであればマイカップを持っていく。買い物の予定があるのであれば、エコバックを持っていく。といいつつ毎度エコバックを忘れる私は、スーパー帰りに通勤用のリュックがパンパンになりますし、ボトルを家に忘れロースターにあるグラスで水を飲んでいることも多々あります。理想通りにはいってないですが、ごみは減ってますからね!私は那須店とロースター勤務がメインですが、マイボトルを持参してくる人が多数派でいつもみんなを見てすごいなと思っています。(笑)タンブラーやエコバックを頻繁に使用することで、計画性も身に付くかもしれませんね。
このように、毎回完璧にはできなくとも実践できた分だけ使い捨て資源の使用は削減できます。テイクアウトカップは環境に悪いから使用してはいけない!という考えだけではなく、自分が持っていて気分が上がるものを使うことで、ゴミの削減に繋がっているようなサイクルを作ることが大切ですね。
さいごに
ここでご紹介したテーマは、現在のように環境への配慮が叫ばれる以前から健在している課題です。自分たちに何ができるのかを考える為に、まずどのような問題があって、自分はその何に関心があるのかを知ることからスタートするのが良いのかなと思います。その中で、消費国にいる私たちだから選択できることを、自分のライフスタイルに合わせて取り入れて行けば、より良いコミュニティとして循環していけるのではと思います。
Text by Chiaki Kuwahara