- サステナビリティ
デセール食材探訪・那須 江連農園〜いちごを通して蘇る過去とこれからのこと〜
2023年に入り半月経ちましたが皆さまいかがお過ごしでしょうか?新しい年を迎える度に新たな目標や挑戦をされる方も多いと思います。今回のブログの執筆者でもあり、今年は年男でもあるONBUS COFFEEペイストリーシェフの山中も様々なことにチャレンジしていきます!これから冬本番になってくるので皆さまお身体にはくれぐれもお気をつけください。
そんな冬から春にかけて益々美味しくなってくる果物といえば…そう『いちご』です!
ONIBUS COFFEEで毎年お世話になっている栃木県那須塩原にある「江連農園」。昨年伺った視察のこと、これまでの商品やこれからの取り組みについてレポートします。
江連農園への訪問
写真:江連農園の看板
昨年4月、ONIBUS COFFEE自由が丘店オープンと同時にペイストリーの工房ができ程なくして、ペイストリーチームで江連農園へ視察へ伺うチャンスがありました。
実は、僕はONIBUS COFFEEへ参画する前から江連農園のいちごとは長い付き合いがあったのですが、そのことは後ほどお話しします。
しかし実際に江連さん本人にお会いするのはその時が初めてでした。緊張しつつも心躍らせながら向かった気持ちとは裏腹に、到着するやいなや代表の江連純生さんは「こっちこっち」と手招きし早速いちごハウスへ案内してくれました。笑
江連さんの農園は、ひとつのビニールハウスだけでもかなりの広さでしたがそのハウスが幾つもあり、すべてをほぼお一人で管理されています。さらに江連農園のいちごは無農薬。乳酸菌などを使用し一から土作りを考え、いちごの無農薬栽培をされています。
ハウスの中を歩く際は土や苗を踏みつけないよう注意したり、傷んだ枝を取る時には引っ張ってしまうと株も駄目にしてしまうので丁寧に千切らねばならず、かなりの注意力を要します。それでも食べてくれる方の気持ちや思いを考え、手間が多い無農薬栽培を続けているそうです。
写真:これから真っ赤になっていくいちごたち
『いちご』に対する愛情
いちごの栽培に携わって30年近く経った江連さんは、今でも1年目の気持ちでいちご1粒1粒と接していると話してくれました。その深く優しい愛情を1番感じたのはいちごを何気なく摘み採る江連さんの『手』でした。
写真:摘みたてのいちごと江連さんの職人の手
これまで真摯にいちごと触れ合ってきた年月や温かさを感じさせるその手は、『職人』というカテゴリーの中で同じ枠で考えるのならば、この手は三つ星に値するのではないかと思ってしまう程に背筋が伸びる気持ちになりました。
「これ食べてみ。美味しいから。」
僕たちが色や形を選び採ったものを食べた後に江連さんが摘み採ってくれました。
衝撃でした…
江連さんが選んでくれたいちごは、僕たちが選んだいちごの見た目と大きな違いはないように見えましたが、甘さ・酸味・何より凝縮された「美味しさ」が段違いでした。見た目からは想像ができず、同じように見えてこんなにも美味しさに違いがあること、そして見事にそのいちごを真っ先に摘み採る江連さんの姿に愛情を感じ、心底感動しました。
そして、その感動と同時にふいに、僕自身の20代前半の記憶が蘇ってきました。
江連農園の記憶と出会い
パティスリー(お菓子屋)に勤めていた20〜25歳頃。パティシエにとって最も繁忙期のクリスマスは大量のケーキを製造しています。1番大変だったのは24歳の頃。勤めて4年目が経ち、先輩や同僚も卒業し、順番的にすでに1番古株になってしまった僕と同店のシェフ・スタッフ2人。人員補強もままならないままクリスマスを迎え、生まれて初めて72時間起きて仕事をしていました。(もう二度とできない)
大量のクリスマスケーキには大量のいちごが必要になります。”いちご500パック”という今考えても恐ろしい発注をしていました。この時期は、世間はどこもいちご不足で頼んだパックが全て同じ農家、品種が揃うことはほぼありません。しかし、その時手にした500パックの中には、形はあまり良くはなく飾り向きではない。だけど、めちゃくちゃ美味しいいちごが何箱かありました。
今思い返すとあれは絶対に江連さんのいちごだったのではと確信しています。
またその頃、日本橋にある『LA BONNE TABLE』というレストランへよく通っていました。こちらの料理はもちろん、コース料理のデザートの美味しさと組み合わせに圧倒されるわけですが、そのデザートに使用されていたうちの一つが、江連農園のいちごでした。
「どうしてもこのいちごを活かしたデセールを提供したい!」
という思いが募り、後日LA BONNE TABLE中村シェフにご紹介をお願いしたところ、快く引き受けてくださり江連さんと繋がることができ、レストラン時代には数々の江連農園のいちごを使ったデセールを作りあげてきました。
さらには、現在メンバーとして参画しているONIBUS COFFEEでも江連農園のいちごを取り扱っています。
偶然とも思えないこの繋がりに共感し、僕自身の江連農園との出会いはやはり『食』の場であるということを再確認しました。
ONIBUS COFFEE × 江連農園
写真:オープン当初提供していた苺のモンブラン
さて、現在の話に戻ります。ONIBUS COFFEEで唯一のカフェスタイルの店舗である自由が丘店では、これまで様々な江連農園のいちごを用いたメニュー・スイーツを提供してきました。
写真:いちごジャムと奥添製パンの全粒粉トースト 発酵バター
写真:江連農園のいちごの焼き込みタルト
写真:江連農園いちごのクリスマスケーキ
週末限定で提供しているアシェットデセール・トースト・焼き菓子。昨年末にはクリスマスケーキとしても登場しました。ゲストの皆様からも「今までで1番美味しいいちごだった!」とご好評いただきました!
週末限定アシェットデセール
写真:江連農園いちごのナポレオンパイ
今現在の冬の期間、自由が丘店にて週末限定で提供しているアシェットデセールは『江連農園のいちごのナポレオンパイ』です。発酵バターを使用したサクサク軽い食感のパイ生地とリッチな発酵バターカスタードクリームに、江連農園の甘酸っぱいいちごをサンドしています。合わせて香ばしくローストしたアーモンドのミルクアイスといちごのコンポートを添えて。
現在大人気のデザートです!!
春に向けてのお菓子
これから益々美味しくなっていく江連農園のいちご。
今春3〜4月頃には自由が丘店のショーケースには『ショートケーキ』を、ONIBUS COFFEE各店舗には江連農園のいちごを扱った焼き菓子たちを提供予定です!
『食材の透明性』という言葉を大切にしたいからこそ、江連さんの熱く優しい情熱のこもった「いちご」たちをより多くの方に最高の形で届け、発信、提供することで、ゲストと生産者と自分たちが互いに豊かになれる環境を目指していきたいと思います。
どうぞご期待ください!
Text by Kohei Yamanaka